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キサ

Author:キサ
ファンタジーとバトルとラヴをこよなく愛し、熱しやすく冷めやすい社会人。

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【第1章】神父と騎士 -a father and a knight- 6

2016.05.12 22:03|クロスマテリア
 アレンは半ば当惑し、半ば好奇心に誘われるままそこに立っていた。
「…どーなってんだよ。なんで神父さんが……てかあの2人、まさか自分たちだけでこの状況どうにかする気か?」
 行こうと思えば自分も加勢できる。それなりの力量も持っている。
 しかし、『誓約』がアレンを縛りつけていた。
―――聴報院は、許可なく多院の行動に直接手を下してはいけない―――
 あくまで公平な、あくまで情報収集を生業とした彼らのみの『誓約』だ。破れば、禁忌に触れる。
 歯噛みするアレン。――と、下から息の切れた男の声が聞こえた。
「…アレン、ミリア……君たち、やはりまだこんなところに……」
 全力疾走で走ってきたため、白い法衣が汗で濡れていた。
「クライル様!?」
 アレンは相手の名を叫ぶと、慌てて彼の傍らへと降りたつ。
「貴方こそ、なんでまたこんな所まで……見たところ、避難所からわざわざ戻っていらっしゃったようですが――」
 さすがに、アレンは一目で大まかを見抜いていた。
 クライルは息が整うのを待ったあと、鍛錬所のほうへ視線を移す。
「ラーグが、来ているでしょう………」
「まさか、彼を助けるために?」
「いいや」
 クライルは静かにかぶりを振った。
「彼に、そんなものは必要ない。むしろ、君たちのほうを守りにきた」
 言われて、アレンは答えが出ずとも直感する。
「………ミリア、は、大丈夫でしょうね。神父サマが側にいるので。―――で、彼は一体、何をする気なんですか?」
 クライルは答えず、かわりに2人と100数体をじっと凝視していた。


 刹那。
 ラーグの起こした行動に、ミリアは我が目を疑った。
 胸に下げられた金の十字架(クロス)。ねっとりと血で覆われた手でそれに触れると、あろうことか、それを口に咥えたのだ。
「………………な……っ―――!」
 掠れた声には、行き場のないほどの混乱と憤りがぐちゃぐちゃになって乗っかっていた。
 十字架は、聖職者と認められた者なら誰もが与えられ、それ自体が法の神イルダーナフと同等であると教えられる。 それを咥えるなんてのは、神を喰らう行為に等しい。
 が、その怒りを感じたのもほんの束の間で。
 直後、それは強烈な恐怖に変わる。
 寒気が―――した。自分とはまったく異質の強大な力をラーグから感じ、ミリアは萎縮する。
 突如。

 光の輪(リング)が芝生を走り、何かの陣を描いたかと思うと、その中から、一体の漆黒の闇が現れた。
 闇―――いや、そう思ったのは、その生き物の体があまりにも真っ暗で、全てを呑みこんでしまいそうだったからだ。 闇は獅子のようにしなやかな体躯を奮い立たせ、血の如く赤い双眼を険しく開く。
「な………に……」
 見たこともない、巨大な獣に。
 ミリアがようやく取り戻したのは、そんな言葉だった。
 闇の肉体。血色の瞳。そして―――身に纏う気配は、明らかに大量の魔気。
「見たとおり、動物だが」
「ああそうドーブツ―――って、違う!!」
 思考が追いつかないせいで、危うくラーグの戯れ言に流されるところだった。ふぅ、セーフ。
 ちなみに魔物たちは、何か途方もないものを前にしているかのようにひたりと固まっていた。
「明らかに!違うでしょう!っていうかむしろこれは―――」

 魔獣。

 それだけ口に出来ず、尻すぼみに消えるミリアの声に、ラーグは再び薄い笑みを送った。
 次いで、魔物の群れを振り返り。
「一瞬だ」
 念を押すように一言呟くと、
「『蹴散らせ(グラン・ジャル)』」
 たった、一声。
 が、それを聞き取った瞬間――――ミリアの視界で、白が、弾けた。
 獅子の咆哮は、強烈な風を呼んだ。溢れた光に色はあったかもしれないが、強すぎる閃光の前では、認識できない。
 目の前で崩れ落ちる魔物たちの体を見ながら、ミリアはラーグの背中に問いかける。
「………なんなんですか。あれは?」

+++

「君は、魔族の生まれる魔界と、死せる魂が還る冥界には、紙一重で境界空間があるのを知っているかな?」
 穏やかな口調の問いかけに、アレンはとりあえず、修練学校で学んだことをそのまま言ってみた。
「――は?…ええ。ナンでも魔族が死者の魂を取り込まないよう、境界の門に番人がいるとかナンとか……」
 言ってみて、なんとなく自分でも「うわぁ、馬鹿らし」と思ってしまった。
 死者が還る場所?番人?そんなモノ本当に存在するのか?
 この眼で見たものしかあまり信用しない彼にとって、これは非常に奇異な話だった。
 が、イモヅル式に蘇ってくる教科書の内容に、彼の顔は次第に固まっていき。
 それを敏感に察したクライルは、答えがわかったうえでもう一度訊ねる。
「では、その番人たちがどのようなものかは?」
「……それは」
 アレンの頬が強張る。
「…彼らは、魔から生まれ魔に属する、魂の崇高な守人。主と認めたものには忠誠を誓う絶対の服従者。そして―――― その体はいずれも黒き夜に覆われ、赤光の瞳を持った――獣の姿をしている。……と」
「そのとおり。あの獣こそが、冥界の番人――…そのうちの一体だ」


 ラーグの雑な説明でも、ミリアをビビらせるには十分だったらしい。
 彼女は危うく落としかかった剣を持ち直すと、すごすごと呟く。
「そんなもの……どうやって召喚するんですか」
「魔獣を招くには、神に対する裏切りの行為が必要になる。お前も、もう見ただろう」
 彼の口調には丁寧さが全くない。手っ取り早く答えだけを教えてはくれないのだ。
 だがその『裏切り』が十字架を咥えることというのは、容易に想像がついた。
 けれど、それよりも異様だったのが、彼の内を渦巻く膨大なまでの魔気。
「聖魔導を使える人が、これほどの闇魔導まで扱えるなんて………そんな神父様聞いたことないです」
「目の前にいるが」
「いやそーゆうイミでなく」
 普段のラーグと同じくらい気のない声で返すミリアに、彼は一呼吸置いて答えた。
「前を見ろ」
 言われたとおりに覗き込み、ミリアは驚愕した。
 跡形もないと思われていた緑の芝生。その上に、折り重なるように倒れていたのは、決して死臭を漂わせる骸ではなくて。
 消耗して気絶はしているものの、間違いなく生きている騎士たちだった。
 いそいで駆け寄ろうとするミリアの腕を、ラーグの手がひっつかむ。
「魔に当てられて力を使いきっているだけだ。今行っても、お前の聖気にはまだ馴染めない」
「…どうして………」
 色々な感情がぶつかりあう中、ミリアが見つけた言葉を声に出す。
 ラーグは相変わらず淡々とした声で、
「『誓約』を成立させているやつも、たしかにいた。だがほんの3、4体だ。ほとんどは人間を殺してなどいない」
 言外に、その3、4体は消し去った、と言っていた。
「お前からは、僅かだが魔気の匂いが残っていた。聖堂騎士団の誰かが、魔精を召喚した。誰だ」
「そんな………」
 喉から絞り出た言葉は、ラーグの意見に驚いたものではなかった。瞬時に、それに対する回答が出たのだ。
 ミリアは、確かに「『誓約』を立てた」と断言した兵の姿を蘇らせた。


「………………ウィル……」

+++

 空が、夜の群青色を帯びている。
 静寂に包み込まれた礼拝堂で。
 彼は、宙の一点を仰ぎながら沈黙していた。

「……終わったか」
 喜びもせず、落胆もせず、ただ抑揚のない声で呟くと、音もなくスッと立ち上がる。 そして、軽くため息をつく。
「思ったより、あっけなかったかな」
「期待外れだったか?」
 唐突に聞こえた、背後からの低い声が、彼の背を叩く。
 振り向かないままで驚いたのが一瞬だったのは、こうなることをある程度は予測していたからだ。酷薄な微笑を浮かべると、 声の主へと振り返る。
 雲が晴れ、礼拝堂内に銀色の光が満ちた。
 それに照らされた、アッシュ・ブロンドの髪と、若々しい端正な表情。
 聖堂騎士団第二小隊員、ウィル=モカビリーは、ラーグの姿を捉えてにっこりと笑った。
「これはこれは……ずいぶんとお若い神父様ですね。出世されたでしょう」
「少なくとも、ヘラヘラ笑いながら同僚を魔精に喰わせる奴よりはな」
 ラーグの声は、至って冷淡だった。加えて、ミリアが治癒したため両手の傷も癒えている。
 ウィルが、少し間を置く。
「………なぜ、気づきました?」
「聖気が満ちるこの教会内で、お前ひとりから魔気の匂いがした。他人に残り香として染み付くほどにな」
 ほぅ……、と、小さな吐息が漏れる。
「それはそれは………いい鼻をお持ちでいらっしゃる」
 口でそう言っても、声に感心した雰囲気などカケラもなかった。
 金と銀の髪は静かな対峙を守り―――ふいに、銀の方が剣の柄に手を伸ばす。
「では、僕を殺しますか?神父様」
「お前の相手は俺じゃない」
 あっさりと言い放った言葉に、ウィルはほんの少し眉を詰める。
 ラーグの黒い法衣が動く。
 その後ろに立っていたのは――――
「………副長……」
 ウィルが初めて驚きに目を瞠る。だがすぐに元の冷笑を作ると、
「…誰が『僕』の存在に気付いてここまで来るのか考えてましたが。正直、あなたが来るとは思いもしませんでしたよ」
 その声の、なんと残酷で酷薄なことか。
 そこにはもはや、自分がこの手で教えた心優しい剣士の姿はどこにもなかった。
 ミリアは、ぎゅっと服の裾を握り締める。
「ウィル……あんたが……―――あんたが、魔精を召喚してみんなに寄生させたの?」
「はい」
「なんで……」
 口をついたのは、そんな、在り来たりすぎる質問だった。
 ウィルはそれに、少し大げさすぎるぐらいの素振りで顎に手を添え首を傾げる。
「『なんで』?『なんで』――――さて、なんででしょうね。日々の生温いママゴトに飽き、混乱と戦争を欲するのに、 なにか理由でも?」
 感情の感じられない言葉の向こうに、嘲るような笑いが聞こえた。
 ラーグが黙ってただ傍観するその横で、ミリアはより一層俯いたかと思うと、急にふっと力を抜き、顔を上げた。 敵意―――いや、そんな生易しいものじゃない。忌むべき敵を刈り取る者の、無慈悲な瞳だ。
 すべきことは、……そう、決まっている。
「構えなさい」
 凛と張った声で、ミリアはその腕に巨剣を出現させる。そして、傍らの神父を一瞥した。
「ご助勢はいりません。この者は、私自らの手で罰します」
 ラーグが頷くのと、両者が動くのは同時だった。

 剣先が月光に煌き、金きり音をあげて擦れあう。
 何度も受けては離れを繰り返し、しばし攻防は均衡を保った。
 はたから見ていたラーグなら気づいたかもしれない。双方の刃がぶつかり合うたびに、余波で風が唸りをあげていたことが。
 全力の力対力でぶつかれば、女の自分が不利なのは分かっていたため、ミリアはなるべく距離を取ろうとする。
 が、ウィルは当然ながらそれを読み、彼女から離れようとしない。
 一度刃がきしみ、2人はギチギチと銀色を抑えあったまま均衡した。
「どうしました。お得意の魔法でも使わない限り、僕を倒すのは不可能ですよ」
「……っあんた……!こんな場所で魔法使ったらどうなるか、分かって言ってんの!?」
 苦しげなミリアと違って、ウィルの顔色はあっさりとしたものだった。
 礼拝堂はそんなに広くない。ミリアほどの実力者なら、跡形もなく吹き飛んでしまうだろう。
 教会を守る神聖結界の柱となっている、この聖域が。
 しかし青年は、ぞっとするような笑みを浮かべた。
「だから、どうだと?聖域がひとつ崩れようと、僕にはまったくの無意味です」
「………………!」
 次の瞬間、ミリアは力任せに剣先を弾いていた。ウィルが少し目を押し上げ、そのまま立ち止まる。
「そう……」
 ミリアは、戦士にふさわしい斬れるような視線を持ち上げた。そして軽々と、片手で巨剣を持ち上げる。
「あんたには、剣(コレ)ひとつでじゅうぶんね」

 瞬間、ウィルの剣が唸った。
 恐ろしいまでの速さでミリアに詰め寄り、刃と刃を擦り合わせる。
 ギチギチという、実に小気味良い音が静寂に軋んだ。
 苛立ちと憎悪をむき出しにした目で、彼はそれでも笑む。
「………これまで散々目に焼きつけてきた聖剣《セルフィート》で戦ってくださるとは……。どうやら、存分にその 愚かさを知っていただく必要があるようですね」
 弾けた剣尖に、風が唸りを上げる。魔気の風だ。
 黒い真空が、ミリアを、そして礼拝堂の内側を傷つける。横目でそれを眺めながら、ミリアは焦りを感じた。
 これくらい、ラーグが聖魔導で保護してくれればなんの問題もないのだが―――彼はミリアの言葉どおり、微動だにせず じっと立っているだけである。
 ちょっとだけ自分の言葉に後悔しながら、それでも剣を構えて集中する。
「抜き放て」
 巨剣の刃の根元が、ぼぅっと淡い光を帯びた。光はゆっくりと、だが確実に動き、先端へとたどり着く。 銀の刀身が、白光で満たされた。
 ラーグの片眉が、ぴくりと動く。
「何をやったのか知りませんが――」
 頭上に、ウィルの白マントが翻った。逆光で、表情は読めない。
「晶魔導もなしに、何ができるというのですか……!」
 銀が白に落ち―――しかし、金属が擦れあう音はしなかった。
 無音。その静寂の先で――――――
 鋼の刃が、粉々に吹き飛んでいた。
「…………なに……?」
 重なっていた双方の影が、再び距離を取っていく。
「栄誉に思いなさい。これと刃を交えたのは、聖堂騎士団では団長以外であんたが初めてよ」
「どういう……ことですか」
 失うはずのなかった武器を葬られ、同時に吸い込ませてあった魔気が拡散、浄化し。
 ウィルの意識は次第に薄れてゆく。体の自由がきかない。人間の身で、大量の魔気を操った代償だ。
「…鞘から抜いた。たった、それだけよ」
 思いのほか冷静なミリアの声に、ウィルは霞む目を精一杯押し広げた。
 銀の刀身は、本来の力を覆い隠すただの鞘。その下にこそ、宝剣のひとつ――《セルフィート》と呼ばれるものは存在していたのだ。
 聖の鼓動。魔を滅する剣。
 それが、《セルフィート》の真の姿。
 白き先端を見つけたところで―――彼の意識は、深淵へと沈んだ。

+++

「……解せんな」
 深深と降りしきる月光の下、ラーグが言葉どおり納得いかない様子で顔をしかめる。
 目の前には、剣を『鞘』に戻すミリアと、その足元に転がる男の影。
「なぜ、止めを刺さない?」
 ミリアは少し勿体ぶってから、聖剣を光の泡に戻す。そしてほんの少しだけ、こちらを振り返った。
「殺しません」
 逆光で、彼女のほっそりした輪郭部分しか、ハッキリとは認識できない。
「この者には、生きながらに本当の意味での罰を受けさせます」
「無法の聖職者を殺すことは、正義の処罰として許可されている。それでもか」
 ミリアはしっかりと振り向き、―――柔らかく微笑んだ。
「殺しません」
 もう一度、ゆっくりと断言する。
 不思議と、完全にこちらを向くと逆光が収まっていた。聖女の優しさと、騎士の非情さを兼ね備えた、見事な笑みだった。
 ラーグは軽くため息を吐き、視線を逸らす。
「……………勝手にしろ」
 天頂には、冴え冴えとした月が浮かんでいた。

+++

「では、行ってまいります!クライル様!」
 晴天の下、ミリアの元気な声が響く。
 大聖堂教会を含める聖都トルティアの入り口。
 そこに、3人の人影はいた。
「とても重要で危険な旅だ。ミリア、ラーグをしっかり支えてあげてください」
「はいっ!なるべくそうするようにします!!」
「………………」
 威勢はいいがどこか引っかかる言い方に、クライルはしばし言葉を途切ったが、なんか水を差すのも悪いと思い、黙っておいた。
 ミリアは、むんと胸を張ったあと、ちらほらと町の中を覗いて見たりする。
(アレン……やっぱり見送りには来れなかったか……)
 教会に魔物が現れた一件で、聴報院は大忙しだ。
 普段はヒマだヒマだとタカをくくっているアレンも、さすがに抜け出しては来れなかったに違いない。
 ま、それはそれで仕方ない。
「ラーグも。気をつけて」
 言われたラーグは何か考えかんでるような、不機嫌なようなオーラを滲み出しながら。3秒ほど間を置いて――
「………おい」
「くれぐれも頼んだよ、ラーグ」
 なんか言いかけたが、クライルの絶妙な滑り込みが見事にシャットアウトした。
 傍らで「?」とした顔をするミリアと、どこか激しくメンド臭そうに肩を下ろすラーグ。
 そんな3人を微笑まじりに眺め、クライルは優しい仕草で十字を切った。
「《レガイア》と彼らの旅路に、イルダーナフ神の加護があらんことを」


 聖都を出てしばらく歩くと、小高い丘にさしかかる。
 まったく会話がないのにそろそろ息苦しくなってきたのか、ミリアは思い切って話しかけてみた。
「あの、クラウド様」
「俺をクラウドの名で呼ぶな」
「え……じゃなんて?」
「好きにしろ」
 ミリアはしばし考え―――
「……じゃあラーグ。ちょっと訊いてもいいですか?」
 なぜイキナリ呼び捨てなのか、という思考に少し眉を寄せたが。とりあえずどーでもいいことにした。
「3つまでなら」
「う……っ…」
 訊きたいことが山ほどあったことを見透かされて、ミリアは苦い表情をする。
 頭を抱えたり口を開けたり閉じたりして百面相を繰り返す様子に、ラーグは喉の奥で小さく笑ったあと、淡々と急かす。
「1つめ」
「え゛………!?え、えーと……じ、じゃあ、ラーグとクライル様はどういうご関係なんですか??」
「父と子」
「……………………………はへ?」
 あまりにも突飛な答えを即答で言ったため、ミリアの思考回路は一時フリーズする。
 ややあって――――

「えええええええぇぇぇぇぇぇぇぇ!!?」
 野原に絶叫が響き、鳥の何羽かが飛び去った。
 ラーグはそれでも前を行く足を緩めぬまま、うっそりと呟く。
「やかましい」
「む、むむむむ息子で!?親子でそしてクライル様が父親に心配して……!?いいいけませんラーグ!え!?ちょっと待……っ。おおお落ち着きましょう!!」
「お前が落ち着け。…第一、親子と言っても名義上での話だ。血の繋がりはない」
「へ?それってどーゆう……」
「お前の喚き声で気分が最高に悪くなった。よって、質問はあとひとつ」
「ええ!?そんな……」
「次」
 有無を言わさず言い放つ口調に、本当に不機嫌なんだと悟ると、ミリアはまたしばらく頭を悩ませる。
 訊きたいことはたくさんあった。番人のこと、彼の聖気・魔気容量のこと、《レガイア》のこと……etc。
 考えあぐねた末――彼女が出したのは、こんな言葉だった。
「……なんで、あたしの同行を許可してくださったんです?」
 今日の明朝――つい先ほどになるわけなのだが――、後始末やなんやでわたわたしているミリアに、彼が自ら「連れて行って やってもいい」と言って引っ張ってきたのだ。
 なんて言うか……とりあえずかばん扱いでなくなったのは確かだろう。
 ラーグの、わりと早めな歩調は止まらない。
「理由は主に3つだ。1つ。食料や旅費獲得のいい足になる。2つ。『復元』があれば俺の聖気の回復も早い」
 前言撤回やっぱこいつ最悪だ。
 ミリアは怒りより先に疲れのほうが立ち、げんなりと息を吐いた。
「………で、3つめは?」
 どうせロクなことじゃないとは思いながら、ミリアは気のない声で訊ねた。
 だがラーグは一瞬黙したあと、どこか、しぶしぶと。
「お前は………守らなくていいから」
「………はい…?」
 嬉しいのかなんなのかよく分からない返事をされ、ミリアの体がカクッと傾く。
 よく晴れた空に、点々と、聖歌が聞こえていた。

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