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キサ

Author:キサ
ファンタジーとバトルとラヴをこよなく愛し、熱しやすく冷めやすい社会人。

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【第2章】妖精の街 -fairy town- 1

2016.05.12 22:25|クロスマテリア
 いい?ミリア

 人はね、誰でも心にお星様を持っているの

 とてもとても小さくて、霞んでしまいそうなお星様でも

 それがあるから、人は夜道を迷わずに歩めるのよ


 ミリアは、そのお星様を見つけてあげられるような子になりなさい

 他の誰もが見逃すような、小さな小さな一番星を………


 そう言って微笑む母の顔が、誇らしかった。
 私はハッキリと頷いた。
 彼女のようになりたいと願うようになっていた。


 ……………が。





「えー……と」
 こめかみに冷や汗を流し、ミリアは呟いた。
「………なんで、こうなったんだっけ?」

 簡素だが客で賑わう喫茶店。
 つい先ほどまでは、自分もそこの客――だった……はず、なの、だが。
 彼女は今、なぜか厨房にいる。
 しかも服装まで変えており、普段着ている黒い修道服と白マントははるか奥の棚の中。
 現在着用しているのは、きっちりとネクタイを締めた薄手の上着に、膝より少し高めのふんわりとしたスカート。 それに、所々に可愛らしく波を打った真白いエプロン。典型的な、ウエイトレス姿である。
「うぅ………足がスースーする……」
 丸いお盆を握り締めながら、ミリアは火照る頬を押し殺して呻いた。
 修道女(シスター)という任以外に経験の浅い彼女は、人前で肌を見せることはそうそうなかった。
 しかも本職は騎士である。
 ――あ。ちっちゃいときアレンと水遊びがてら川を魔法で半壊させたことがあったっけ。……まぁそれは置いといて。
 とにかく、これはマズイ。と、思う。
 一修道女の名誉に関わる問題だ。たぶん。おそらく。
「だ…っ第一機能的じゃないわよこの制服。こんなに丈が短かったら、もし熱い食べ物運んでるときに落としたらどーすんの?  衣服を仕様する目的で最も大事なのは、肌を保護することよっ。そもそも、この至るところに設置されているちみっこいレースの山はなんなわけ?かゆいんだけど。あたったトコむしょーにかゆいんだけど………!」
 悪態をついても状況がよくなるワケじゃなし。
 厨房に、快活な男の声が響いた。
「おーいバイト!客だぞ頼む~」
「…うぇあぃ………」
 珍生物が盲腸になったような返事を返し、ミリアはヨロヨロと立ち上がった。
 そして、自分をつまみ飛ばして去っていった人物の名を心の中で叫ぶ。

 …ラ、ラーグのあほ――――――――ッッ!!!!



+++++++



 とある宿屋の一室。
 小さなシングルベッドに腰を下ろし、書棚から適当に選んだ書物をペラペラとめくっている、ひとりの男。
「………いろいろと訊きたいことはあるが、まず」
 ラーグは、目線だけちらりと上げた。
「そのナリはなんだ?」

 部屋の玄関に突っ立っているのは、いい具合に焦げたミリア。
 白い肌や栗色の髪が未だにプスプス言っているのに対し、黒い修道服が傷ひとつついていないことから、 店で何かあっただろうことは容易に想像がついた。
 ミリアは廃人のように覇気のない面を傾け、
「え……と………店でその、団体さんでよからぬ客に出会いまして…」
「ふむ」
 ラーグの声に、相変わらず抑揚というものはない。
「―あ!本当に失礼なんですよ?人のこと変な目でジロジロ見ながら妙なこと口走って、しかもあろうことか あたしの体の至るところを触りまくるんです。だからっ」
「だから?」
 声は、単調。
 だが書物を読む手がストップしたのを見破ると、ミリアはたちまち硬直した。
「だから、えと………………思わず魔法を……ぶっ放してしまいまして。お店……クビに………」
「なるほど。で、給料は」
「…………ゼロです」
「当然、そうだろうな」
 ため息が、室内を撫でる。攻防は終わったのか―――。ミリアが安心した、そのときである。
「―――で?店の修理費は。」
 どこか本気で地鳴りが聞こえてきそうな暗雲のオーラに、ミリアは泣きたい心地を殺しながら豆粒のように小さくなるしかなかった…。



+++++++



 半壊どころか4/5壊した喫茶店の修理にさほどの時間はかからなかった。
 ラーグが、聖魔導で再生させたのだ。
 設計図だけ頭に叩き込めば、あとは驚くほど一瞬の出来事である。ラーグの詠唱のもと、敷地内に巨大な陣が敷かれ、 そこから出た淡い藍色の光が空間を包み込んだかと思うと、ガレキが勝手に宙を舞い、繋ぎあわさっていくのだ。
 町の人間もさることながら、ミリアまでもが驚いたのは無理もない。
 ものの数分で、作業は終わった。


「聖魔導って、なんでもありなんですね……」
 宿に戻ったあと、感心と呆けの混じった声で、ミリアが呟く。
 ラーグはその一言は無視し、今一度、まだ焦げあとの残る少女を見つめたあと、深いため息ひとつ。
「……みすぼらしい」
「悪ぅございましたね!そもそも、『旅費を稼げ』つってあそこに放っぽってったの、ラーグじゃありませんか!!」
 ミリアの喚き声も、彼の耳には届いていないようで。
「うるさい」
 それだけ言ったあと、再び黙り込んでベッドに腰掛ける。
 気まずい沈黙が流れた後、ミリアはバツが悪そうに、思い切って訊ねてみた。
「あの、ラーグ…。ひょっとしてひょっとしなくても、むちゃくちゃ怒ってます?3時間かけて1ルーンも稼げなかった上、 聖気の浪費までしちゃったから」
「…………………」
 ラーグはそれにも一瞬黙したあと、おもむろに立ち上がった。ミリアの横を無言で素通りし、部屋の中央付近に立つ。 何をしたいのか分からず首を傾げるミリアに向かって、彼は静かに呟いた。
「…ここから、ここまで。小走りで歩け」
「はい?」
 間抜けな返事が返ってきたのも、無理はない。ラーグはもう一度、部屋の入り口から壁際までを一直線に指で示す。 言われている意味が、サッパリ分からない。
「さっさとしろ」
「――へ?あ、はぁ……」
 とりあえず、ミリアは駆け出す。すると―――不意に、彼女の無防備な足元に、ラーグの片足が突き出された。あまりに 突然かつ予想不可能だったので、ミリアはそのまま綺麗につまづき、勢いよくフローリングの床に顔面から激突する。
 べちごんっ!と、いろんな複数音が混じった音が、刹那の間宿屋を支配した。
「な…っあにすんですかっ!?」
「よし」
「イヤよしじゃなく!」
 這い上がったミリアの様子とは裏腹に、ラーグはどこか満足した顔色である。
 ますます混乱する少女の前で、煙草を灰皿に押しつけ、淡々とマントを羽織りつつ、
「5分でシャワーを浴びろ。その恰好では出かけられん」
「は?え?」
 バスタオルを投げかけられて、ミリアがきょとんと目を開ける。

「市長のところに行く」



+++++++



 妖精都市クレイシア。
 それが、この町の俗称だった。
 都市と言っても、大して大きいワケではない。聖都トルティアと比べたら、その面積は1/3にも満たないだろう。 しかしながら町と称するにはほんのちょっぴりでかい。そんな、中途半端なところである。

 市長の館に入るのは、信じられないくらい容易だった。
 門番は、こちらが名乗らずとも2人の法衣――とりわけラーグの下げる金の十字架を確認するや否や、慌てて門を開放した。 大聖堂教会は、実質このファーネリア国の頂点に存在する。その関係者を無下に扱うなど無礼の沙汰だ。 おそらく、無条件で通すように仰せつかっていたのだろう。
 別段驚きもせずスタスタと先を行くラーグの後ろで、ミリアは軽く門番に会釈をした。
 すると、彼らは面白いくらいに慌てふためいたあと、ビシッと敬礼をする。
(うわぁ………)
 と、ミリアは苦笑いした。


「旦那様がお越しになられるまで、しばしお待ちを」
 そう言ってちょび髭のおじいちゃんが部屋を出て行くと、ミリアは急にそわそわしたように辺りを見回した。
 広大なロビー。その四方の壁には高そうな絵画やランプが散布している。細かな彫りを施した天井には、きらびやかな シャンデリアが飾られており、床には一面に金縁の絨毯。座らされたソファーに敷かれてるコレは……もしかして、毛皮?
 もの心ついたときから質素な寮で過ごしてきたミリアにとって、そこはまさしく「お城」だった。
 あまりにもキョロキョロするので、ラーグは腕を組んだまま低く告げる。
「……鬱陶しい」
「ですよね!?うっとりしますねっ!」
「…………………」
 まるで聞いていないミリアに、ラーグは軽く眉を寄せた。
 そして、やはり置いてくるべきだったと、本気で後悔した。
 「そういえば」と、ミリアがふと思い立ったように振り向く。
「ラーグは、なんでここに来たんですか?」
 まだどこか不機嫌な様子のまま、ラーグは組んだ腕をほどいた。
「……人を探してる」
「人?」
 そこで、部屋のドアが勢いよく開く。
 唐突なことだったので、ミリアは条件反射で背筋を正した。…修練学校時代の日常である。
 入ってきたのは、さっきのちょび髭のおじいちゃんと、もう一人。
 丸々と立派な体躯から、不健康なまでに健康的な暮らしをしているのが手に見て取れた。横に広い肌をすっぽり包んだ 毛皮のローブを着込んで、息を切らせながら2人を見る。
「これはこれは。お待たせして申し訳ありません。私がクレイシア市長、ギース=グロフトでございます」
 ハンカチで脂汗を拭き取ると、そのハンカチが一気に湿る。
(…うわぁ……)
 と、ミリアは思ったが、ここで苦笑いはマズイと本能で感じたので、押し殺しておいた。そして小さくおじぎする。――が。

 隣のラーグはただただ黙したまま、それどころか相手を見ようともしない。 じっと窓の外に目を向けている。……ミリアの目が正常に作用しているならば、多分、睨みに近い眼光で。 翠の瞳を細めたまま、なんの変哲もない庭を凝視すること、約5秒。
 ちょっとちょっと……
 ミリアが肘で軽く小突くが、気にした風など微塵もなかった。
「ああ、どうぞお構いなく。法衣から見て、神父様とお見受けしますが………いやこれはまた随分とお若いですなぁ」
「能書きはいい。単刀直入に訊くが」
 ぶしつけたような言い草に、ミリアは意識が遠のくのを感じた。
 さすがに、市長のほうも僅かに笑顔が引きつる。
 そんな様子などお構いなしに、彼は続けた。
「フォル=メンゼルという人物を知っているか」
 ………めんぜる?
 どこかで聞き覚えのあるその名に、ミリアが首を傾げる。だが対してグロフトは、重い表情に変わった。
「…ええ、もちろん知っておりますとも。彼女ほど才を持った学者はおりませんからね。……メンゼル様を、お探しで?」
「この町にいると聞いた」
 会話の中で、ミリアはようやく思い出した。
 フォル=メンゼル。地質学・魔法学に非常に精通し、現在の五大賢者とも称えられる学者だ。ミリアも彼女の著書は何冊か 目を通したことがあるが、素晴らしいものだった。
 なるほど……メンゼル様に《レガイア》のことを訊こうとしてるのね……
 ―――――ん?
「ラーグって、メンゼル様と知り合いなんですか?」
 思わず割って入ってしまい、ミリアは慌てて口をつぐんだ。が、ラーグはどちらかというと、なんかものすご――く 嫌そうな顔をした。…なにやら、とてつもなく良からぬ思い出があるらしい。
「……………そのうち分かる」
 そうとだけ言って、再びグロフトに向き直った。
「で、彼女は今どこに?」
「それが………どこから説明いたしましょうか……」
「この町から妖精が消えているのと、何か関わりがあるのか?」
 ビクリと、グロフトの丸い体が揺れる。同時にどっと汗が噴きだし、ちょび髭のおじいちゃんが慌てて代えのハンカチを 手渡した。せわしなくそれで額を拭く市長を見ながら、ミリアも気づく。
「そういえば……おかしいですね。町に入ってから1匹も見てません」
 妖精都市、というのは伊達ではない。
 実際にたくさんの妖精たちが飛び交う町並みからつけられた2つ名だ。
 グロフトは未だに汗を拭きながら答える。
「ええ……ええそうです。この町の高台のほうに1本の樹があるのですが……」
「知っている。宿にある歴史書で読んだ」
 説明は必要ない、と言いたげなラーグだったが、ミリアが引かなかった。
「お、教えていただけませんか?お願いしますっ」
 ラーグは一度うんざりとした顔になったが、諦めたように視線を外す。
「は、はぁ……左様ですございますか。ではご説明しましょう。その樹は《ティダの大樹》と呼ばれてまして、今から500年ほど 前に大陸からの旅人がとある町で見つけた新種の種同士を」
「「簡潔に」」
 なんとなくあらぬ方向へ話が進みそうだったのを、ラーグとミリアがせきとめる。
「あ、はい。その樹は昔から町に住まう妖精たちが守ることとなっていました。そんなある時――3ヶ月ほど前でしょうか。 大樹に妙な実が出来始めたのです。妖精たちは喜びました。……どうやら、それが出来るのが彼らの幸せそのもののようで ……ですから私どもも共に喜んで祝いました。そのときまでは」
「そのとき?」
 ミリアがオウム返しに問う。
 グロフトは軽く目を伏せ、次いできっぱりと言った。

「《ティダの大樹》が、―――人を喰い始めたんです」

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