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キサ

Author:キサ
ファンタジーとバトルとラヴをこよなく愛し、熱しやすく冷めやすい社会人。

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【第3章】ヒトナラザルモノ -the heresy child- 8

2016.05.16 20:38|クロスマテリア
 遠い遠い昔。

 全能の神イルダーナフとの戦に破れた『異端者』は、天空より地の底へと堕とされた。
 陽の没する闇の大地に戒められ、漆黒の霧の中に深い根を張り。
 やがて、『異端者』の肉体は永遠に陽の射さぬ黒い葉を覆い茂らせる。
 根付いた力の欠片は、深々と染み込んでゆき。生まれた影は、暗黒の身に赤い両眼を滲ませる生物となって。


 ・・・・・・魔の棲まう領域は、ここに確立した――――





+++++++





「ハァ!?魔族棲息域(カタンツ)に行くぅっ!?」
 ジョーダンでしょ!?と喚く妖精に、爆弾発言をした当人の返事が返ってくることはなく。
 ラーグは黙ったまま、目の前に広げられた地図へと視線を落としていた。
 もともと、滅多にこの聖地を離れることのない幻獣の持つ地図は、数百年前に人間の旅人が落として行ったものであって。 なんだかウルドの所から死人のような顔をして帰ってきたシャルマが出してきたそれは、さすがに地名や地形がかなり異なってはいたが。
 目的の場所は、方角どころか形の一端すら変えずに、紙面の上に広がっていた。

「っかー!アンッタねぇ、意味分かって言ってんの?いくらどてっ腹に風穴開けられたからって、みすみす魔族どもの巣窟に行くって!?まともな人間の考えるコトじゃないわよっ。・・・イヤ、アンタが人格的にいろんな意味でマトモじゃないのはものすごく分かってたけどさ。とにかく!反対、絶対反対!何がなんでも双子のローズベリー貰ってもぜぇっっったい、嫌だからねアタシは!! ・・・・・・てちょっとこらぁっ。聞いてんの!?少しは反応しなさいよこの生きたマネキン神父がーーー!」
 一気にまくしたててパニくるティティ。
 それでも微動だにしないラーグに向かって、シャルマが困ったように頭を掻く。
「・・・・・・と、言っておるが?ラーグよ」
「放っておけ。飽きればじきに飛んでいく」
「アタシはどこぞのハエかーーーーー!!」
 清々しい即答に、ティティの憤怒の声が重なった。否定しつつも悪態をつきながら彼の周りをくるくる回る、疑う余地もないハエのような様に。ラーグは沈黙を保ったまま、片手に白い光を集めた。

 途端に、ティティの顔からざっと血の気が引く。
 信じがたい速度で物陰に退避し、何か恐ろしい物を見るような目で神父を除きつつ。
「ひひひひ卑怯者ー!そうやって何でも石にすりゃ思い通りになると思ってさ・・・!」
「なら食らってみるか」
「ぐぐぐ・・・・」
 唇を噛んで悔しげに睨む妖精を同じく冷めた瞳で一瞥し、ラーグは光を握り潰す。
 「・・・・・・外道」と小さく呟くティティの声も無視して地図を眺める様子に、シャルマは軽く肩をすくめた。
 そして再び、ラーグに魔族棲息域へのルートを説明する。
 地形の違いから、なかなか話し込んでいるようだ。
 気晴らしと興味が重なって、ティティがシャルマの頭上へ羽根を動かす。
「へぇ~、結構広いのねぇファーネリアって」
「うむ。他の大陸と比べても、規模の違いは歴然であろう」
「ふーん。あ、ねぇねぇ。このちっこい緑の三角は?」
 いつもの調子であらぬ方向へ話を逸らしそうなティティに、ラーグの鋭い視線が向けられる。
「邪魔だ。そういうことは、飼い主にでも聞け」
「あたしゃペットか!ふーんだ、ミリアならアレンと一緒にどっか行っちゃったわよ~・・・・ぉ・・・?」
 その瞬間、音もなく神父の周りの空気が停止したのを敏感に感じ取り、ティティの声が小さく消えていった。
 色褪せた羊皮紙の上から視線を外さないまま、無関心な表情は、あくまで淡々と問う。
「・・・・あいつとか?」
「そ・・・、そーだけど・・・・・ナニよ急に?」
「どこに」
「ハ?知んないわよそんなの。――あ、でもなんか・・・・転化がどうとか言ってたわねぇ・・・」
 転化。
 その一言にしばしの沈黙が振ってきて。
 何か思い当たるフシがあったのか、納得したように目を伏せるラーグ。
「・・・・・馬鹿丁寧なやつだな」
 頭上に疑問符を浮かべるティティに構わず、再び地図へと視線を下ろし。ややあって、背後からぽそりと確かめるような 小声が聞こえた。

「・・・ラーグ。アンタひょっとしてひょっとしなくても、微妙に焦ってる?」

 次の瞬間から3時間強。ティティは石化の副作用に苦しむこととなる。





+++++++





 蒼い光が灯す森は、どこへ行っても同じ風景かと思っていたけれど。
 たった一つ、他とは違う場所があった。
 とは言っても、やはり蒼い密林に囲まれた外観そのものは変わりなく。ただ異様なのは、大地に突き立ついくつもの石碑。
 それぞれには見かけない印が刻まれていて。
 古代語の一種で、幻獣の氏族を示しているのだと、ここに連れてきてくれた幼馴染が教えてくれた。


「・・・オマエも律儀だねぇ。そりゃ確かに、同族の葬式ってのは幻獣にとっちゃ重要だけどさ」
 ため息混じりに頭を掻きつつ、アレンはしゃがみ込んで祈りを捧げる少女に目を向ける。
 足元には、《赤狼》と刻まれた石碑。側には小さな白い花が一本、丁寧に横たえてある。そして離れたところ―――《黄鷲》の 石の前にも、同じものがひとつ。
「そいつらがあの魔族に殺されてたってのは・・・・まぁ、無念とは思うぜ?」
 弁解のような励ましのような、困ったような声を聞きながら、ミリアはすっくと立ち上がった。

 ディルが自分たちを欺くために使った転化は、すり替わる者の皮を被って体に刻むことで成立する。
 それがどういうことかなど、彼の転化を見破った瞬間から分かりきっていた。


「あたしを狙ってやってきた魔族に殺された人を、狙われた本人が御参りしないのはおかしいしね」
 軽く深呼吸して、気持ちを整理する。

「運ばれて気がついたときには、葬式もなにも、全部終わっちゃってたから」
「それで俺が呼ばれたわけ、ね」
「ありがとアレン。この場所、幻獣の人たちに連れてきてもらうのはちょっとさ・・・」
 静かに言葉を濁すミリア。
 頼もうと思えば出来た。もともとはこの地の住人である幻獣に案内を願うのが一番効率はいい。
 ・・・・・しかし、どのツラ下げて頼めと言うのだろう。
 《赤狼》の門番と《黄鷲》の衛生兵。彼らを死なせた元凶が、「墓参りをしたいので案内してくれ」と、どうして口に出来ようか。
 結局、ミリアはアレンの《真理眼》に頼ることにした。


 お前らしーね、と首を振るアレンの前でもう一度一礼したあと、ミリアはその場を後にしようと振り返る。
 来るときちょっと見かけたのだが、ラーグは何やらシャルマと一緒に地図を覗き込んでいた。 次の場所はだいたい見当がついているのかもしれない。
 そうして視点を泳がすと――――。ふと、蒼い森のなかに違う色を見つけた。ゆったりとした民族衣に、鋭い嘴。頭のてっぺんの、 微妙にハゲた金の羽毛。
 忘れるはずがない。牢で自分たちを襲ってきた、《黄鷲》の族長。たしか――
「クマラ様」
 名を呼ぶアレンの声に気づき、クマラは二人の姿を映し出すと、その場で足を止めた。

「・・・・・何をしておる」
 怒気すら含む唸るような響きに、ミリアは一瞬答えることができず。
 ふいに目線を変えたクマラは、《黄鷲》の墓の前に置かれた純白の花に気がついて。
「我らの墓にも手向けを添えたのか」
 心底意外そうな吐息に、ミリアは小さく頷いた。
「貴様らは、己を殺さんとした氏族にも花を添えるのか?」
「氏族とか種族とか、そんなのは関係ありません。あたしのせいで死んだ人に、何もできないままここを出て行くのが嫌だという、 ただの身勝手な行動です」
 見上げた紫暗の瞳は、研ぎ澄まされるように真っ直ぐだった。
 自分に対する罪悪感と、死んだものへの決別をしっかりと受け止めた目だ。これまで数え切れない「死」を見届けてきた――― 戦士の目だ。


「誇り高い目だな。強い信念を持ち、そして、早死にする者の目だ」
 突如切り出したクマラの意図が分からず、ミリアは怪訝顔をするしかない。
 誇りとか信念とかはともかく―――果たして最後の一言は褒め言葉なのかどうか怪しい。
 なんだか複雑な思考を悶々と考えていると、次いで今度はアレンに顔を向け。
「《碧竜》―――貴様の父親も、同じ目をしておった」
 弾かれるように顔を上げたのは、ミリアただひとりで。
 アレンは眼鏡の奥で変わらぬ表情を貫きながら、微塵も動じずに吐息を零した。
「いくら禁忌を犯したとは言え、やはり友人の死というのは辛いですか?」
「友・・・・そうだな。あやつは《碧竜》の中でも1、2を争う強者だった。森を汚した人間どもに自らの命も顧みず戦い、栄誉の死を遂げた若き族長。だがしかし、あやつが最も愛したのもまた、その汚らわしい人間の女だったのだ」
 沈む声を見つめ、アレンは沈黙を保つ。
 一歩ずつ近づきながら、クマラは金の嘴を動かす。
「人間は、森を、友を、そして我が氏族を奪う。そう思ってきた。だが今、その娘の目を見て分からなくなった。 ・・・・真に悪しきは誇りか?強い信念というものは、己が身を焼く刃でしかないのか?もしそうであれば――――我らはこの先、 何を支えとして生きてゆけば良い?」


 悠久と思えるほどの沈黙が降りた。
 やがて、呆れたような盛大なため息がアレンから放たれる。
「あ~・・・なんて言うかこー・・・・・偏ってますよねー」
「「は?」」
 陰鬱な風を一蹴にするかの如くへらりとしたコメントに、ミリアとクマラ、双方から間の抜けた返事が返ってくる。

「誇りとか氏族とか人間とか、正しいとか汚らわしいとか。なんつーかなぁ・・・・そーやってビシッと区分できるほど、 なんもかんも単純じゃーないっしょ?得るものがあれば失うものもある。だったら、どれもテキトーに持っとけばいいんじゃないんスか?」
「て、適当だと?」
 あまりにいい加減な返答に、さすがのクマラも驚きを隠せない。
 アレンは構わず続けた。
「絶対に揺ぎ無いと説けるものなんて在りませんよ。特に、人の心はね。 大きな集合だけで真偽を判断してると、個を見失う。」

 クマラは、息を呑んだ。
 かつての友と同じ目をした少年の、かつての友とはあまりにかけ離れたいい加減な口調に。
 しかし・・・・・


「・・・あやつも、そう考えていたのだろうか」
 だから、人間を愛したのか。誇りなどという柵(しがらみ)を切り捨て、思うままに生きたというのか。 永遠に光を灯さない目に、自分すら閉ざしていたなにかを見ていたというのだろうか。
「俺の親父ですからね。・・・案外、なんも考えてなかったのかもしれませんよ」
 あっけらかんと笑うアレンの幼い笑顔は、本当に何にも考えていないかのようで。

(・・・・たしかに、よく似ておるな)
 そう、金色の老鳥は胸の奥で呟いた。
「ここ《ルドル》に移ってから数千年。禁忌の仔に《真理眼》が宿ったのも、何かの天啓かもしれん」

 古き器から抜け出し、新たな知恵を求めるべきなのだと。
 シャルマのように。そして、――――――かつての友のように。





+++++++





「――えぇっ!?魔族棲息域に行く!?」
 戻るや否や、予想の範疇を超えたラーグの言葉に、ミリアは思わず張り上げて。
「本気で言ってんですか!?いくら腹に風穴開けられたからって、あんな魔族の巣窟に自分から飛び込んで行――――ぶっ!?」
 素早い仕草で顔面に古書をクリティカルヒットされ、ミリアの台詞は強制的に遮られる。
「うるさい。聞き飽きた」
「あ、飽き・・・?初めて言ったと思うんですけど!?」
「当然だろう。俺も初めて聞く」
「意味が分かりません!!!」

 冷然とした神父の態度に、ミリアは精一杯の怒りをぶつけてみるも。
 いつものように返ってくる空しい沈黙に、疲れたように腰を下ろした。
「それにしたって・・・・直球ですね。あそこは聖堂騎士団(ラウストウィア)ですら一度も入ったことないのに。これっぽっちの人数で行くなんて、 自殺行為ですよ」
「怖いなら残るか」
「な!こっ怖くなんかないですよ!!これでも副長ですからねっ。一緒に行きます!」
 途端に強気に出るミリアを横目に、ラーグは黒いマントを身につける。
「《使徒》が動いているなら、《レガイア》も間違いなくそこにある。どの道向こうからやってくるのなら、こちらから赴いたほうが手間が省けていいだろう」
 皮肉を言う口振りに多少呆れつつ、ミリアはなんとなく口にする。
「・・・なんだか、すごい頑張ってますよね。こんなに真面目に《レガイア》を探すだなんて思ってませんでした」
「・・・・・・・お前の特技は素で喧嘩を売ることか?」
「へ?――あ、イヤ!そういうワケじゃなくて・・・・っ」
 慌てて弁明するミリアに、神父はいつもと同じ冷めた視線を送ったあと。
「別に。とっとと面倒事は終わらせたいだけだ」
「・・・・不真面目大爆発じゃないですか」
「無駄口を叩くなら出ろ。すぐにでもここを発つ。あと」
 淡々としたまま、彼は部屋のすみっこを視線で示し。
「あの鬱陶しい妖精も連れて行け」
「・・・えっ・・・・・ティティ!?」
 見ると、そこには絨毯の角に潜り込んでこちらを睨んでいるティティの姿があって。
 慌てて駆け寄ると、彼女は全身の鳥肌を抱えながらうーうー唸っていた。
「だ・・・っ大丈夫!?目が据わってるわよ!?」
「あぁ、ミリア。ヘーキよ・・・・何がなんだかちっとも平気じゃない気がするけどとりあえずヘーキよ。 命に別状はないわ。・・・・いーやこの際、怨霊になってとり憑くのもいいかもね。そうでなきゃ生霊でも構わないわ。 と言うか、あいつの存在自体が世界危機だわね・・・・・万害あって一利ナシよ。どうしてくれようこの恨み・・・・・。 末代先まで呪ってやる・・・・・・・・・」

 とかなんとか。
 延々と呪いの言葉を呟く様子は明らかに普通ではなく。

「・・・・・何かあったんですか?」
「自業自得だ」



+++



「魔族棲息域までは長い。くれぐれも気をつけ・・・と、まぁ、おぬしらなら心配要らんだろうがの」
「一刻も早く、《レガイア》が魔族の手より戻りますよう」


 集落の入り口。
 見送りに来た《赤狼》と《白狐》の族長は、あっさりとした別れの言葉を言った。
 迷路のような森なので出口まで送ろう、と言ってくれたのだが、アレンが道を全て把握していたので必要がなくなった。
 ディルが襲ってきた際に使った《真理眼》で全て見抜いたのだと言う。
 去ろうとしたアレンの背を、気づいたようにシャルマが下から引っ張る。
「なんです?」
「アレン、おぬしは自分を王の器ではないと言ったな。じゃが、儂はそうは思わぬ。無理強いはせん。しかし忘れんでくれ。 儂らはいつでも、おぬしを待っておる」
 にっと笑むシャルマに、アレンも同じく無邪気な笑顔を返した。

「たぶん、徒労に終わるっスよ」



 唐突な旅人たちの姿が見えなくなると、ふぅ、と肩を落とすシャルマに。
 隣のウルドは柔らかな表情のまま。
「残念ですか?」
「・・・いいや。誰人も他者の生き方を変えることは出来ぬ。あやつがただの人として生きるのに満足しておるなら、 それも良かろう」
 そう言って笑うシャルマの顔は、本当に清々しげだった。





+++++++





 蒼い聖地は、やっぱりどこからどう見ても木々と大地の連続で。
 迷いなく進んでいくアレンに感心しつつ、ミリアは前を行く神父の背中を見つめていた。
 法衣は後にラーグが聖魔導で復元したが、マントの方の微妙な傷や血の跡は気にも留めていないようで。 自分たちの盾となって残った生々しい傷跡に。ミリアは意を決して、彼の横へ並んだ。
「あの、ラーグっ」
 歩きながら、視線だけをこちらに向ける無感情で端正な顔。
「確かに今のあたしじゃ、従者として至らないとこだらけです。・・・でもせめて、これからはラーグがあたしのせいで怪我することがないようには頑張ります。あ、聖痕とかそういうのは関係なしに。騎士や聖女であるからには、誰かを守れる立場でありたいんです」
 ミリアにとって、これは宣誓に近かった。

 聖痕・・・・・・そこに刻まれたラーグの重責を、少しでも理解できたなら。


 だがその口から出てきた言葉は、慈悲の欠片もないくらい冷え切っていて。
「言ったはずだ。騎士としても聖女としても、お前に出来ることは何もない」
 視線を逸らして降ってきた声に、ミリアは言葉もなく全身でしゅんとなって。
 そこへ、くだらないことのように付け足されたのは。
「お前はお前だ。それ以外何になれる」
「はぇ?・・・・」
 意外な一言に立ち止まるミリアと、振り返ることもなく先へと進んでいくラーグ。広がっていく距離を目で追いながら、 きょとんとする少女の記憶に、メンゼルの言葉が蘇ってきた。



 ―――これから先、あなたがラーグのことを知る機会があっても。
    例えばそれが、あなたにとって楽しいばかりのものではなくても。
    ………どうか、ありのままの心で、ありのままのあなたでいてください―――



 ・・・まだ、彼のことなどほんの少ししか知ってはいないのかもしれないけれど。
 根付いた心の中に、どこまで踏み込んでいいのかも分からないけれど。
 聖痕のこと以外で、《ルドル》に来て分かったことがあるとしたら――――

「――はいっ」
 惜しみない笑顔で答え、ミリアは元気よく駆け出す。


 この冷徹で非情で無法者な神父も、本当は優しい人なのかもしれない―――

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