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キサ

Author:キサ
ファンタジーとバトルとラヴをこよなく愛し、熱しやすく冷めやすい社会人。

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【第4章】魔の血族 -the demon blood- 2

2016.05.16 21:14|クロスマテリア
 時は少し遡る。
 結局あの後、必死で探し回ってはみたものの。
 押し売り骨董屋を見つけることは、ついにできなかった。


「くっそー・・・まんまと騙された。あたしのなけなしの給料・・・・・」
 補給を終えた袋を抱え、宿に戻るや否や沈没する少女。その頭から軽やかに羽根を動かすと、ティティは神妙な空気を滲ませながら テーブルへ移る。
「・・・アレは騙されたってゆーか、乗せられたってゆーか・・・・。とにかく、元気出しなよ。 お金のことはよく分かんないけど、そんぐらいスグ戻ってくるって」
「・・・そーだよね。金は盗っても盗られるな、だよね」
「ウン。じゃ元気出す前にさ、まず落ち着こっかミリア」
 棒読みのような生温かい声でそう言うと、ティティはミリアの背中をポンポンと叩くのであった。



「聖気と魔気の気配??」
 幾分時間が過ぎた後、ミリアからの説明を聞いたティティが発した第一声は、正直に驚いたもので。
 金色の削れた表面に埃のついたランプを手に取り、紫の瞳は興味と、そしてほんの少し不審のこもった眼差しを 注ぐ。
「聖気と魔気って、本来は全然相容れないモンでしょ?それを同時に感じるなんて、妙だなって」
「ん゛~。アタシにはわっかんないけどぉ・・・・・・確かに胡散臭いわねぇ~」
 眉間に皺を寄せながら、ティティの顔は興味津々である。
 妖精の気質かティティの性格か、彼女の未知のものに対する好奇心は絶大なものがある。あまり長続きした例はないが。
 そんな彼女の提案も、いつだって突飛なことで。

「じゃさじゃさ、ちょっと擦ってみようよ!」
「・・・はい?」
 首を傾げる前で、妖精は自信ありげに人差し指をビシッ!と突き立て、
「昔どっかで聞いたんだけどさっ。ランプを擦ったら、願いを叶える精霊が出てくるって話っ」
「・・・えと、それはお伽話で・・・て言うかあたしは聖気と魔気の話をね・・・」
「いーからいーから。ね、お願い!1回でいいから、気分だけっ。アタシじゃ触れないみたいだし」
 目をキラキラさせて頼み込む様子に、ミリアは小さく苦笑すると、やがて頷いた。

「早く早くっ」
「えっと・・・こうかな?」
 急かすティティの側、ミリアは何気ない仕草で剥げたランプの肌を撫で―――
「・・・はい、お終い」
 これでいい?そう訊ねようとランプを卓上に置いた、そのときである。

 突如、褪せた金の表面に赤い帯が走った。
 瞬間のことだったので、それが何の形だったのかなど理解する間もなく。
 次いで、ランプの口から視界を覆わんばかりの煙が噴き出す。だがそれは不思議と目の前を塞いだだけであって、煙臭さは一切 持ってなく。
 と、白煙の向こうで、ゴンという痛々しい音が響いた。
「・・・・っで!ンだここ?久々の外と思ったら・・・・・・」
 立ち尽くすミリアたちの前で、不思議な霧は瞬く間に消えていき――――。
 部屋の上部に現れたのは、見たこともない青年だった。

 褐色の肌に、黒い髪は小さく後ろで束ね。荒々しい赤い瞳は、不機嫌そうに辺りを睨んでいる。鎖のついた手枷を後頭部に 置き、乱暴にさすっていた。・・・どうやら、頭をぶつけたらしい。
 どういう仕組みなのか、羽根もないのに宙に浮かぶ体をゆったりと動かして。
 男はミリアに気づくと、実に・・・・・実にヤル気なさそーな顔で覗き込んできた。
「テメェが今度の主人か。なんか・・・ヒョロいし薄っぺらいし、いかにもトロそうな人間の小娘が来たモンだな」
 初見早々言いたい放題である。
 それでも硬直したままの少女と妖精を眺め、男はさらに不機嫌そうな視線を落とし。
「オイ、きーてんのかよ?テメェに話してんだぞ人間」
「・・・・・・へ?え!?・・・えと、誰?」
 混乱が冷めないままなんとか切り出した質問は、やはり間の抜けたもので。しかし相手は呆れたように顔を歪めると、 軽く頭を抱えた。
「・・・あのな、礼儀って言葉知ってっか?訊くならまず自分から名乗れっての」

 なんなのだこいつは?
 状況はまったく理解できないが、とりあえず腹の底から馬鹿にされているのは分かる。
 微妙に煮えたぎりそうな感情を沸々と押し殺し、ミリアはむすっとした声で返答した。
「・・・・・・ミリア。ミリア=イリス」
「フーン。ミリアか。ガキくせー名前。ま、覚えとくぜ。一応は主人だしな」
 ガキくさくて悪ぅございましたね!
「あの・・・さっきから主人て・・・・。なんのこと?」
 この変な無重力男の言動にはいちいちカンに触るところもあるが、とりあえずは現状把握が先だ。
 ミリアの問いかけに、彼は「ああ」と思い出したように身を起こし、
「そーいやあのクソジジイども、これは内密事項だとか言ってたか・・・オレはジン。見ての通り、このランプの魔人だ。これからお前の願いを―――ってうをぉっ!?」
 言い終わる前に。
 いきなり振り下ろされた聖剣の刃をギリギリでかわし、ジンと名乗る男は大きく飛びのいて壁にへばりついた。
「あ・・・・っぶねぇな!いきなりナニしやがるッ!?」
「――あ。ごめん、魔人って聞いて、つい」
「『つい』でウッカリバッサリ主人に殺されてたまるかっつの!まだひとつも願い叶えてやってねぇし!」
  「願い?」
 《セルフィート》を光の粒に戻しながら、ミリアはきょとんと問い返す。

「・・・・ひょっとして、禁止事項以外の願いごとなら、なんでも3つまで叶えてくれるっていう、アレ?」
「ゲ。全部言いやがった!人のセリフとるんじゃねぇよッ」
 あからさまにしかめっ面のジンの言葉に、ミリアは盛大に脱力した。
 なんともはや・・・・・・
 きっと壮絶にパニクっていいはずの場面なのに、妙に納得してしまう自分がいるのはなんなのだろう?
 多分、かの自分ロードまっしぐらな神父との旅で、さらに図太い神経でも出来上がってしまったのであろうが。 ・・・・・それも、相当に間違った形で。
 そんなことを悶々と考えていると、
「――あ?お前・・・・・」
 不意に覗き込んだ赤い瞳に、一瞬固まってしまったが。
 ジンはしかし、すぐに頭を数回振ると。
「・・・・んなワケねぇか。アイツはもっと品とか知性とかあった気がするし」
「・・・ていっ」
「っだ!テメ・・・・・・剣先でランプを突くんじゃねぇ!」
 誰のことを言っているのかはちんぷんかんぷんだが、少なくとも馬鹿にされているのは間違いなくて。
 しかもそれが何となく当たっているような気がするだけに、ミリアはほんのちょっぴりお茶目なイタズラ手段に出てみたものの。
 どうやら相当強い力でランプと同化しているらしいので、3、4回小突いた程度で大目にみてやった。
 なんだか妙に人間じみた性格してるけど、魔族であるなら聖剣に触れるのは辛いはずだし。

 というか、なんだろう・・・・・
 なんかさっきから1スペース空いてると言うか、なにか忘れている気が・・・・・
「・・・・オイ。ソコのちみっこいのだけどよ」
「あ!そうだティティ!!」
 どこか不審がるジンの指す先を見て、ミリアが短い声を上げると。
 卓上には、はげたランブと膝をつく妖精の姿があったわけで。
「精霊が・・・・・アタシの夢見るランプの精霊が・・・・・こんなヤンキー魔族・・・・・・・」
 落胆しきって沈むティティがさすがに不気味だったのか、ジンは静かに1歩、退いた。
「・・・・・ナンなんだ一体?」
「えーと・・・なんかショック大きいみたいだから、そっとしといてもらえる?」
 とりあえず。
 色々訊くのは、ティティが立ち直ってからになりそうだ。





+++++++





「じゃあ、死者の蘇生と生者の殺害。それ以外の願いなら何でもいいの?」
 いくらか時間を置くと、不思議と馴染みというのが生まれるもので。
 説明を聞いたミリアは、ベッドに腰掛けながら、宙空であぐらを組む魔族を見上げた。
 普通聖職者なら、魔族と確認するや即・消滅が通例ではあったけれど。少なくともミリアは、敵意のないものまで始末しようという 考えは持ち合わせていなかった。
 ・・・・ちょっとさっきは反射運動しちゃったけど。
 大丈夫。生きてるんだから問題ない。たぶん。

 ダルそーな瞼を半分落としながら、ジンは「ああ」と軽く頷く。
「その2つは誓約で禁じられてっからな」
「ていうか、フツー願う?ンなえげつないコト」
 なんとか復活したティティは、いつもの調子で毒づきつつ、羽根を震わせた。
 ジンはその意見に、微弱ながら暗い反応を落とし。
「どうだかな。叶わねェからこそ、『願い』ってのは生まれるモンなんだろ」
 血色の双眼に浮かんだ、ほんの僅かな淀みに。
 ミリアが気づくより早く、ジンは不機嫌な渋面を上げる。
「オラオラ、分かったらとっとと3つ考えろ。言っとくが、こっちは好きでやってんじゃねェんだからな。 んな面倒事サッサと終わらせてぇんだよ」
 急かすジンとは裏腹に、ミリアはやたら落ち着いた様子で肯定する。
「そうだね。だってあんた・・・えと、ジンだっけ?本当なら相当強い魔族のハズだもん」
「へェ・・・・・分かんのか?」
「分かるわよ。それだけ強力な誓約に縛られてても、まだ魔気が残ってんだから」
 大した事を言ったつもりはなかったのか、淡々と語るミリア。 隣で首を傾げるティティと彼女を交互に見比べ、ジンは胸中で感心したあと、ぶっきらぼうに口を尖らせた。
「まーな。コレでもちったぁ名のある魔族だったんだが――」
「ウソだヤンキー」
「くそちびは黙ってろっつの」
 横からツッ込むティティに渇を入れつつ、赤い視線は記憶を振り返るように一瞬空を見上げ。
「――ま、それでも教会の連中に捕まりゃこのザマさ。誇りも力も剥ぎ取られ、弱っちい人間なんぞに隷属しながら生きてかにゃならん」
「人間が嫌いなの?」
 静かに問うミリアの声は、単調だがどこか頼りない。
 ジンはどうでもよさげに腕を組むと、
「嫌い・・・っつーか、弱ぇやつに興味はねえ。魔族ってのはそういうモンだ」



 それは・・・・たぶん人間でも同じだよ。


 少なくとも、幼いころ自分を取り巻く環境はそうだったと。ミリアは実感していた。
 父と母が死んだあと、武勇の名家イリスに残ったのは、まだ年端もいかない小さな自分だけで。
「イリスの武伝も終わりか」
「せめて男児であれば」
 そんな声を聞くたび、必死になって剣の腕を磨き続けた。
 強く。誰よりも強く。そうでなければ、自分の存在理由が分からないほどだった・・・・・・・


「――オイ。オイ!」
「・・・・はへ?」
 乱暴に肩を揺すられて、ミリアは現実世界にリターンする。
「はへ、じゃねーよ。ったく・・・・テメェと話してたらどんどん論点がズレてく気がするぜ。で?」
「?何が?」
 きょとんと目を丸くするミリアに、部屋のどこからかブチリという音が響いた。
「何が、じゃねーよ!願いだよ願い!とっとと言えっつてんだろが。これ以上オレに生き恥かかす気か!?」
 扉という扉、窓という窓を締め切っていなければ間違いなく誰かが駆けつけてきただろう大音響で叱りつけるジンの 怒声を真正面から浴びて。
 うずく耳鳴りを押さえながら、ミリアはなんとか頷いた。

 とは言え。いざ考え出すと決めかねる。
 なにせどんな願いでも叶えてくれると言うのだ。めちゃくちゃ魅力的ではないか。
 と、あれもいいこれもいいと悩み出すミリアの横で。
「うっさいわねぇ~。レディに怒鳴りつけるなんて、どんな神経してんのよ」
「ハァ?誰がレディだっつの。片やアホほど寿命が短い人間の小娘に、片や見た目ばっか若い妖精のババ・・・・」
「テーブルさんいらっしゃーい!」
「っだあぁ!だからランプの上にんなモン投げんじゃねぇ!!ってかなんだその馬鹿力!?テメェ妖精だろっ!?」
「―――よしっ。思いついた!」
「なんだミリアッ!コイツを止めて欲しいなら今すぐ永遠に止めてやるぞ!?」
 命の危機とあってはさすがに悠長に浮いてはおられず。
 なんとかテーブルを押さえるジンに、ミリアは嬉しそうに人差し指を立てた。
「1つ目の願いは、『この街を探検したい』!」

 部屋の空気が一時フリーズするには、十分なセリフだった・・・・・





+++++++





 こんな厄介な体になってしまったとは言え、少なくとも人からすれば計り知れないほど永い時を過ごしてきたわけで。
 その間にも、様々な形で人間や幻獣と接する機会はあったけれど。
「・・・・・お前みてーな小娘は見たコトねーよ」
 街の風景が映し出されたランプの表面を食い入るように覗き込むミリアの横で、ジンはうっそりと呟いた。

 普段は力を封じられているが、『願い』を叶える場合のみ、彼は禁忌以外のありとあらゆる権限を得ることができ。
 それは即ち、教会の管轄下―――つまりこのイリーダの街に関する地理的知識も得たことにはなるのだけれど。さすがに 真っ昼間っから魔族が人間連れて観光ツアー開くわけにもいかず。
 結局、室内で気ままに街の風景を眺めるという手段に収まった。

 手放しで喜びまくりながら、ティティとあっちこっち指差して笑む横顔にジンの呆れた視線が届く。
「つーかさ、フツー願うか?ンなもん。前の主人はもっと欲の塊みてーな野郎だったぜ?」
「・・・前の?どんなこと願ったの?」
「『世界中の酒を我が手に』」
「あたしお酒飲めないし」
「イヤ・・・・・そーゆーイミじゃなくてだな・・・・」
 小首を不思議そうに傾げたまま考えるミリアに、とりあえずツッコミを濁らせてみるも。
 あまりよく分からなかったのか、そのまま視線をランプへ戻す少女を見て、ジンはツッ込むのを諦めた。そして、
「・・・さっきも言ったが、そいつはお前の持つある程度のイメージから出来たこの街の『記憶』だ。時間軸もバラバラだが ・・・・・まぁとりあえず、お前がもういいと思うまでは見れっから」
「オッケーオッケー。・・・あ!見たっ?今あそこの鳩片足でスキップしてなかった!?」
 本当に分かっているのか。
 適当に答えるミリアの興味は、再びランプへと戻り。どうやら目的の物が遠くにあるためなのか、じっと目を凝らしていろんな角度 から覗き込んでいく仕草を見て。
 隣から一瞬、ため息が聞こえたかと思うと、映し出された映像がグンとクローズアップされた。
「わ!おっきくなった!いいの?コレって2つ目の願いごとになんない??」
「・・・・・・別にイイって。・・・ンなショボイ願いにいちいちカウントつけたくもねーし」
 本音を口にしたものの、ミリアは一向に気にした様子もないようで。
 「ありがと!」と魔族である自分に笑顔を送る聖職者に、ジンは呆れ半分、珍しさ半分な気持ちになっていた。


 『魔族』。
 そのレッテルを恥じるつもりなど微塵もないが、それ故にはるか昔から人間達は自分たちを抹殺しようと刃を向け続け。
 いつからか、異端の強者を受け入れられない愚か者ばかりが目に付くようになっていた。
 教会の人間とも、何度か合間見えたことがある。
 だが、いくら神に通ずる存在でも、心の芯に巣くう脆さは誰とも変わらず。
 それらを歪んだ形で創り上げて生み出された研究の結果が、もどかしいにも今の自分であるわけだけれど。
 自分以外は全て敵であり、いつだって自分の命を狙っているものなのだと、そう信じてきたのだ。
 ・・・・・・・しかし、この目の前の少女はどれとも違うようで。
 欲がないのか、安上がりなのか、それともただの馬鹿なのか。いずれにしても今分かるのは、不思議と不快を感じない、 ということだけだった。

「・・・似てるんだか、似てないんだか・・・・・」
「へ?なんか言った?」
「べつに」
 そっけない返事に小さく眉を寄せるミリア。そのときである。
「――あれ?・・・・ミリア、これラーグじゃない?」
 神妙な顔つきで呟くティティの言葉に、「え?」と短い返事だけを返し。戻ったミリアの紫暗の瞳に、輝く金色の髪が飛び込んできた。
 「ほんとだ・・・・」と言おうとしたが、声は喉の途中で押し留まる。なぜなら・・・

 見慣れない造りの部屋の中。
 ラーグの向かいには、長い黒髪を結わえた美しい女性が佇んでいたからだ。

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