07 | 2017/08 | 09
- - 1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31 - -
プロフィール

キサ

Author:キサ
ファンタジーとバトルとラヴをこよなく愛し、熱しやすく冷めやすい社会人。

※当ブログの掲載物の著作権は、すべてキサにございます。
無断転載などはおやめくださいませ。

最近の記事

最近のコメント

最近のトラックバック

月別アーカイブ

カテゴリー

ブログ内検索

RSSフィード

リンク

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

スポンサーサイト

--.--.-- --:--|スポンサー広告
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

【第4章】魔の血族 -the demon blood- 5

2016.05.16 22:04|クロスマテリア
 虚ろな灯火が刻んだそれは、果たして幻だったのか――――・・・・


「・・・・どういう・・・こと?」
 完全に陽の光の届かない、冷え切ったイリーダの地下。
 まだ人の匂いすら薄い漆黒の最深部で、突如ミリアたちを襲った赤い瞳は、滑らかな漆黒の四肢を闇に溶け込ませ。ゆったりと重ねられた衣の裾を土の上に擦りつつ、微かな香の香りを風に乗せる。
 素直に美しいとすら思える魔族の姿。それを見たタキの第一声に、ミリアは瞠目の色を浮かべた。

 “母さん”、と。

 確かに、そう言ったのだ。

 唐突な攻撃をかわしたばかりのタキの表情は、やはり緊迫の糸を張らせながらも。同じ瞳に映った、あまりに近しい肉親の姿に。 白い頬には疑惑と、そして動揺する様子がまざまざと刻み込まれていた。
 ・・・・・本当に、どういうことなのか。
 踏み込めない両者の距離と沈黙に気を配り、ミリアは自分の頭を整理しようと試みる。
 タキが人と魔の間に生まれた禁忌の仔であるなら、母親が魔族であるのも頷ける。だが、彼女はとうの昔に亡くなっていると、 ついさっきタキ自身の口から聞いたばかりなのだ。それが何故目の前にいる?まさか、「実は生きてましたー☆」と言うノリなのか? しかしそれじゃあ、どうして攻撃を?
 堂々巡りの思考を断ち切ったのは、目の前で平静を努めようとする女性。
「そんな・・・まさか。いったいどういう――」
 努めていても、声色に見え隠れする当惑の表情は隠しようがなくて。 そのとき、まるで彼女の意志が揺らぎ始めるのを見計らったかのように、魔族の口元が穏やかに緩む。柔らかい――
 おそらく誰が見ても悪意の欠片も感じられないような、優しい微笑み。
 しかしミリアが感覚のみで激しい悪寒を走らせた、その直後。
 再び魔族の背後で、無数の黒い刃が弾けた。
「――タキっ!」
 反応の遅れたタキを庇うべく、ミリアの体が反射的に前へ動き。疾空の盾を展開させようとしたところを、ラーグが言葉無く放った聖魔導が闇のことごとくを消し去る。
 見ると、いつの間に移動したのか、ミリアたちの傍らに立つラーグは、相変わらず薄い笑みを浮かべる魔族から目を逸らさぬままにようやく口を開く。
「タキ。お前の母親は、どうなった?」
 20年前と同じ質問を投げかける瞳には、やはり昔と変わらぬ冷淡な無慈悲さがあり、冷静さがあり、聡明さがあった。言葉の奥に潜むもうひとつの言葉を理解すると、タキは一度小さく目を伏せ―――。静かに、それでいてしっかりと通った声で呟く。
「・・・・・・・死んだよ。魔族棲息域で、魔族に殺されて。骸を焼いたのも、骨を埋めたのも、全部・・・・・・ 全部あたしさ」
 自身を戒めるように繰り返すと、今度は強い瞳で目の前の。・・・母の姿をしたものを睨みつける。
「あんた、一体何者なんだい?」
 鋭い視線に、矢面の女性はゆっくりと――今度は突き刺すような残酷さを滲ませた笑みを零し。背筋が凍るような感じの直後、 突然魔族が地を蹴っていた。
 ところがその体はタキやミリアたちに向かうことはなく、まるで何かから逃れるかのように体勢を折ったわけで。状況が理解できない ミリアが、瞠る視線の片隅に銀色の糸を移したときには、瞬時にラーグが刻んだ幾重もの呪紋が魔族の全身を取り囲んでいた。

「おーーーーーッ。やっぱり」
 一瞬で視界を覆ったまばゆい閃光の中から身を捻らせ出てきたのは、銀の糸を翻すアレンだった。
「ア、アレン!?」
「毎度お約束ながら神出鬼没なヤツね!」
 ミリアとティティの第一声を聞く頃には、すでに全員の側へと着地を終えていて。
 いやー、と頭を掻くと、眼鏡の奥で少年の表情が揺れる。
「神父さんからの言いつけやってたら、なんでかこんな格好いいタイミングに」
「言いつけ・・・?」
 って、なんですか?と、下から覗きこんでくるミリアに、ラーグは面倒臭そうに溜息を吐いたあと、
「・・・この街で、なにか異常がないか調べさせた。どこかの破滅的な方向音痴よりは、幾分やや利用価値がありそうだったのでな」
「なんか・・・いろいろと物申したい気が・・・」
「俺もなんかフクザツ~」
「ここの封印だけ、10の神官が集まっても解放できなかったらしい。調べるだけでも、そこの悪質な占い師に取られた分の補充 ぐらいは賄えるだろう」
「ビジネスな、ビジネス。あとあんた、気前がいいのかケチなのかぐらい、いい加減ハッキリさせとくれ」
 各々の指摘を受けながらも、神父の横顔は清々しいまでに無視を貫いていて。
 そこで、「ん?」とティティが小さな違和感を口にする。
「・・・あ。あのヤンキー魔族は?」
 ラーグに対して言ったのに、なぜかアレンまでもが妙に表情を変えたことが、嫌に引っかかったのだが・・・・・
 相変わらず鬱陶しそうに瞑目する神父に代わって、アレンがなんか生温い笑顔を作りながら説明する。
「あぁ、あの変なランプの魔人とかってやつね。いやーおっどろいたゼー。宿に帰ったら、いきなり魔族が増えてるんだもんよ。 まー害はなさそーだったし、とりあえず神父さんに頼まれたこと報告したら、その場でこっちに向かおうとしたからさ。一応聞いてみたワケ。 したら―――」
「聞くなら早々にあの馬鹿を押し倒していたそこの変態魔族に直接聞けばいい、と言った。後は知らん」
「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」」
 降りしきる静寂の中。全員の視線を受けた少年は、片手をヒラヒラと宙に泳がせ。
「イヤイヤ。そんな目で見なくても、ちゃーんと話し合って穏やかに解決しましたヨ?そりゃーもう、これ以上ないくらいに」
 得体の知れない無邪気な笑みを見せるその瞳に、言いようのない寒気が走ったのは何故なのだろう?
 身体的と言うよりは精神的に労ってやりたい心地を沸々と沸き上がらせながら、ミリアは胸の内で小さく、十字を切った。
 じめっぽくなった空気を一掃したのは、ずっとせわしなく羽根を震わせていた妖精。
「・・・・あ、えーっと・・・・・・。そっそうそうラーグ!アンタさっきあの魔族に何したワケッ?」
 話題転換のつもりだったのが、その言葉を聞くや否や空気がピリピリとしたものに変わったのを敏感に感じ取り。ティティは ただただ、「え?あれ??」と汗を流すばかり。

 ミリアもようやく気がついた。
 先ほどまで目を潰さんばかりだった閃光が、徐々に治まりつつあることに。
 本来ミリアには、聖魔導に関する知識は少ない。イルダーナフ神と直属の間で結びつく、聖なる息吹。大地を創造せし絶対の存在により祝福を受けたものだけに扱える、魔を砕く刃。ところが今見えた呪紋の理は、刃と呼ぶにはあまりに攻撃的とは 言い難くて。どちらかと言うと、補助魔導の要素が強い気がしたのだけれど・・・・・
 なんにせよ、ラーグが警戒を解いていないとなると、仕留められた可能性は低い。
 念のため《セルフィート》を抜剣するミリアの頭上で、ようやくぼそりと補足が入った。
「転化の呪紋を逆向きに刻んだ。・・・・そろそろ本性を出したらどうだ」
「・・・ちぇ~っ。なぁんだ~、もうバレちゃったんだぁ―――――」
 収束する白の中から現れたのは・・・・・・・まだ年端もいかない、幼い少女だった。



 好奇心に満ち溢れたような大きな瞳には、まだ純粋な無邪気さすら感じられ。ぶかぶかに寄せられた衣服から 見える細い四肢は、元気にそこらを駆け回る子供たちと変わらなかったけれど。ほの暗い空間と融合するような漆黒の肌と、 愛らしい面立ちから覗く赤い瞳は、まぎれもない、魔族の持つもので。
 少女は眠そうな目を軽く擦ると、ラーグのほうを向いてニコリと笑った。
「あーゆー解き方は、ちょっと強引すぎるよぉ~?あーあ。しばらく着せ替えごっこはムリかぁ~」
 言葉では責めている風なのに、顔は相変わらずクスクスと乾いた笑いを含んでいるのが、ミリアにはどこか不気味だった。
「着せ・・・替え?」
 怪訝に眉をひそめるタキの言葉に、次いで少女はそちらを向き。
 大きな袖を口元へと運びながら、コロコロと可愛らしく笑う。
「アレはぁ、ライラのお気に入りのお洋服だよぉ~♥キレイだったでしょ?昔ねぇ、魔族棲息域で見つけたんだぁ~」
 美しい貝殻を自慢する子供のように、意気揚々と答えるその言葉に。
 タキの顔色が、一気に凍りつく。
「なぁんかね~、人間なんかを好きになっちゃったみたいなんだよねぇ~。ソレってなんか鬱陶しいしぃ、でも見た目キレイ だったからぁ、殺してそいつの記憶だけ被ってみたんだぁ~♥。すごいでしょ?こうしたらそいつの記憶ごと手に入っちゃっておもしろーい。ライラ、天才~~♥」
 一握りの罪悪感すら宿さない、どこまでも純粋な笑い声に、ミリアは思わず息を呑んだ。
 気に入らないから殺し、その殻を洋服と称す。目の前で明かされる恐ろしい出来事をやってのけた当人は、やはり無邪気な表情を変えないばかりで。
「・・・死者の記憶を、その身に転化として刻んだのか」
「えげつねぇマネを・・・・」
 ラーグが微かに眉を動かすと同時に、さすがにアレンも苦々しく顔を歪め。
 激しい怒りと絶望に肩を震わせるタキにのみ視線を止めると、少女――ライラは再びにっこりと微笑む。
「そっかぁ、あんたコイツの娘だったっけぇ。確かに似てるし、キレイだよねぇ・・・・でも、あんたはいらなーい。 人間臭いし、第一禁忌の仔なんて気持ち悪いも―――んっ」
 瞬間、アレンが動く前に、ミリアの白い刃がライラのいた空間を切り裂いていた。しかし少女は軽く地を蹴ると、ひらりと空へ 身を浮かし、羽根のように着地する。
「あっぶないなぁ・・・・ライラだって一応、魔族なんだよ?ソレで斬られたらさすがに痛いよぉ~。なぁに?なんでそんなに 怒ってるワケぇ~?」
「っ・・・・意味もなく同族を殺して・・・・・・・その姿を辱めて・・・・・・そんなことが許されると思ってるの!?」
 微かに震える声を必死に絞り出すミリアに、ライラは少しきょとんとしたあと。
 ああ、なんだというように清々しく表情を綻ばせる。
「きゃはは!変なこと言うなぁ。ライラはただ、誇りを傷つけたバカにお仕置きしただけだよぉ?第一、強いヤツが弱いヤツを殺すの なんて、当然じゃーん♥」
「・・・・・・・・・・・っ!!」
 声を高めて笑う少女に、ミリアは絶句する。


『弱ぇやつに興味はない。魔族ってのは、そういうモンだ』


 ジンの気のない声が脳裏に蘇る。その本当の意味を、ミリアは今更ながらに知った。
 ・・・・魔族にとって『興味がない』とはすなわち、『居ようが死のうが同じこと』であったのだ。弱者は意思も権利も持たず、 ただ強者の糧となるのみ。それが彼らにとっては当然であり―――生きる、ということなのだ。
「・・・・・なんなの」
 柄を握る手が、自然と汗ばむ。
 聖堂騎士となってから、数え切れないほどの魔物を屠ってきた。人々の安息を脅かすとなれば、強い者も、弱い者も倒した。中には同じように、人語を 解するまでに歳と知恵を備えたものもいた。・・・・・けれど。
 今、生まれて初めて、ミリアは目の前の存在を心から恐ろしいと思っている。目の前の、この小さな―――
 自分たちとはあまりにも価値観の次元が違いすぎる、たった1人の少女に。
「あんた、いったいなんなの・・・!?」

 逡巡の間を置いて、少女は、赤い目を静かに細めた。
「ライラはライラだよぉ?言っとくけど、ライラはディルよりずぅ~っと強いからねぇ♥」
「――!」
「《使徒》か・・・・」
 淡々と続くラーグの声に、ライラはただ、無邪気な微笑みを返すだけだった。



「なななナニナニナニっ?ディルって確か、ルドルで襲ってきたアクセジャラジャラ魔族よね!?」
「・・・だからなーんでそう言いにくい言い方すっかね~?」
 強烈な魔気に身を震わせるティティにツッこむアレンの声は、こんなときでも軽い調子で。
「まぁ、人の形をしてる時点で、外見じゃ力の有無はわかんねーからな」
「・・・・・なるほど、ね。どうりで、昔とは似ても似つかないわけだ」
「!タキ・・・・っ・・・」
 傍らですっと立ち上がったタキに、ミリアが気遣うような瞳を向けると。
「心配には及ばないよ。これでも、なかなか神経ズ太く生きてきたからね」
 それより。そう続けると、タキは眼前に佇む少女を、同じ赤できつく睨みつける。
「魔族の御大将たる《使徒》サマが、こんな穴ぐらまで何しに来たってんだい?」
「―あっ。そーそぉ、あんたたちで遊んでたらつい忘れてたぁ~」
 失敗失敗と言わんばかりに軽く額を小突くと、ライラはくるりと暗がりの奥へ向き直り。薄い唇から、ミリアには理解できない 言葉らしき音の羅列を紡ぎ出すと。突如、最深部の空間一帯が、強烈な赤い輝きに照らされた。
 閃光に目が慣れてくると、円状になった地下の壁と床全域に、おびただしい数の呪紋の輪が現れているのが見えた。 異常なまでに溢れる膨大な魔気が、輪の中を循環し、さらに色濃くなってゆく。
「・・・!?なにを・・・・・っ?」
 一歩踏み込もうとしたミリアだったが、いつの間に張られていたのか、ライラの周囲に広がる見えない壁が、その行く手を阻む。
 魔風を《セルフィート》で切り裂こうと試みるミリアを肩越しに振り返り、ライラはそっと、勝ち誇ったように言う。
「ムダだよぉ。さっきも言ったでしょ?ライラは強いんだって――」
「――つっ・・・!・・・」
 余裕を見せるライラの顔と、膨れ上がっていく凄まじい魔気が不安を煽り、ミリアはたまらず後ろのラーグに目をやる。
「って、そっちはナニさっきから突っ立ってんですかーーー!なんかヤバそうですよ、少しは対処してくださいっ!!」
 いつの間にかのうのうと煙草とか吸っていたラーグは、一度それを口から外すと、
「・・・それは俺に、もっと攻撃性の高い聖魔導を放て、と言っているのか?」
「回りくどくない言い方すればそーなりますね!」
「げっ!チョット待てミリア!それはやべぇ、すこぶるやべーって!」
 リアルタイムで何かに気づき、慌てて制止するアレン。その様子にミリアが首を傾げていると、隣から短い溜息が聞こえてきて。
「別にやろうと思えばやれるが・・・・この狭い地下でこれほどの魔気と聖気がぶつかればどうなるかぐらい、お前でも分かるだろう」
 両者の間を妙な沈黙が駆け抜けたのは、ほんの一瞬のこと。
「・・・・・・・・えと・・・・スイマセン。大崩落ってやつですね。さすがに生き埋めは――」
「そんなことはどうでもいい。俺は遺跡の所有者の了承を得て、ここを調べに入った。魔導を使えば、古代でも最も規模の大きい この砦が瓦礫と化す。早い話が、報酬金が減る。よって俺は、ここで目の前の事象を傍観することにした」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・ケチで決定だね、あんた」
 納得したように頷くタキを横目で見ることすらなく。しかし本人の宣言どおり、自分たちを取り囲むように廻り続ける赤い循環 をただ静かに見守り、ラーグは煙草を床に投げ棄て―――光に触れるか否かのところで、吸い殻は灰となって消えた。
「・・・そもそも、この輪に害はない。放っておいても問題ないだろう」
「へぇ・・・・ライラたちの言葉が分かるんだぁ。賢いんだねぇ」
 ゆったりとした袖をなびかせ、少女はひとたび宙を仰いだあと。
「これで、ライラのお仕事はおっしまぁ~い♥」


 ぺろりと舌で唇をなぞるのが先だったか、それとも唸るような地鳴りに膝をつくのが先だったか。


 刹那、重力が増したかのような負担を感じ、立っていられないほどの揺れがミリアたちを襲う。地鳴りはしばらく続き―――。 収まったときには、ライラの小さな体は虚空に浮かんでいた。

「・・・・・・・・どういうこと・・・なの?」
 輪の消えた壁に手をつきながら、ミリアが驚愕の面を呆然と下げたまま呟く。
 地鳴りが起きる前と後・・・・さらに言うなら、赤い輪が刻み込まれる前と後での、決定的な違いに、彼女は気づいていた。無機質で じめっぽいだけだった空間に満ちるのは、ルドルに匹敵できるほどの、純粋な聖の息吹。
 ライラの表情は、やはり眠そうな笑顔のまま。
「聖地を解放したんだよぉー」
 明るい笑い声に、大量の魔気を使った疲労など微塵も感じられない。
 コロコロと屈託なく微笑むばかりの少女の補足をしたのは、意外にもラーグだった。
「世界には6つの聖地があると言われている。ルドルのように特異な例を除けば・・・・・いずれも、大半は強大な魔気に封印され、凍結していると聞いたが―――」
「そゆことぉ~。聖地の封印を解けるのは、もともとそこを封印したライラたち《使徒》だけなんだよぉ。きっと今頃他の封印も、 カインとディルが解いてくれてるころだよ~」
「・・・!?どういうことだい?なんで魔族が聖地なんてもんを解放して周ってるんだよ!?」
 混乱するタキの言葉にも、ライラは真面目なのかわざとなのか、ふざけた返事を返す。
「きゃははっ、あったりまえじゃーん。それがライラたちのお仕事だもぉ~ん♥」

 ケラケラと満足げに口元を引き上げると、突然音もなく、ライラの周囲に新たな赤い輪が展開し。
「カインに頼まれたのはこれだけなんだぁ。もちょっと遊びたかったけど、今日はここまでねぇ。・・・あ、そうそう」
 思い出した。と、少女は薄れかかった漆黒の四肢のまま、視線だけでラーグを捉え。
「カインから言伝だよぉー。『魔獣を喚べないのは、何も魔気の枯渇が原因とは限らない。そもそも魔導というものがどういうものなのか、よく考えてみるといい』だってぇ」
「・・・・・・。余裕にも助言か。《使徒》とは、随分と驕った連中らしい」
 冷え切ったラーグの視線に、もうほとんど消えかかった頬をニッコリと柔らかく緩ませると、ライラは最後に、小さく呟いた。

『ライラたちは、より強いものに従うんだよぉ。ラーグ』



 微かな余韻を残して。
 そこには、一片の魔気すら感じられない、聖地が誕生していた。

コメント

非公開コメント

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。